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『剣遊記超現代編T』

第二章 男一名イコール美女四名?

     (11)

 スーパー銭湯内は前述したとおり、いろいろな浴場施設が充実していた。それでもまずはともあれ、一般的な大型浴槽が先決と言えた。

 

 周りはもちろん、先客である老若の女性たちばかりで、満開のご様相。だけど四つ子という特徴はあっても、男から完全に女性化している今の元孝治たち四人を警戒する目などなし。同じ湯に浸かる仲間として、どの女性も当たり前に、四人を受け入れてくれた。

 

「「「「あ〜〜、気持ちん良かぁ〜〜☀☀☀☀」」」」

 

 とにかく湯船の中で両足を伸ばすスタイルは、格別に気持ちの良いリラックス方法である。元孝治たち四人は肩を並べて、大型浴槽の縁に背中をもたれかけさせた。昔ながらの伝統で、そろって頭にタオルを乗せたりして。

 

 これも前述のとおり、自宅マンションでの入浴は、すでに何度も実行済み。自分自身の女体にある意味瞳が慣れてしまっているので、周りの女性たちの(いわゆる)オール団体ヌードにも、今や鼻血も出ないほどに順応している四人ですらあった。

 

 その四人の右横には、涼子も肩までを湯の中に浸けていた。孝乃がそんな涼子に瞳を止め、静かな口調でささやいた。

 

「涼子はなんの抵抗も無かとね? こげんして兄妹そろって、風呂に入ることにやねぇ

 

「そげん言うたら、こげな風に兄妹で風呂に入るなんち、子供のとき以来、すっごいひさしぶりな感じがするばいねぇ

 

 治代も周囲に気を配りつつ、小さな声で涼子相手にささやいた。孝江と治花も、同じくうんうんとうなずいた。これに涼子が応えてくれた。

 

「う〜ん……確かに今はお姉ちゃんになっとうけ、あたしもいっちょも抵抗感ば無かっちゃねぇ✄ これが今でもお兄ちゃんのまんまやったら、さすがにあたしもいっしょにお風呂はせんかった……っち思うっちゃよ それと……

 

「「「「それとぉ……?」」」」

 

 いかにも意味深そうな涼子の言葉尻で、四人が一斉に妹に注目した。これに涼子は、あっけらかんとした顔で応じてくれた。

 

「お姉ちゃんたちの今のスタイルって、ほんなこつあたしの理想そのものなんよねぇ♡♡ やけん前にも言うたっちゃけど、あたしもお姉ちゃんたちとおんなじ血が流れよんやけ、あと何年かしたらきっと、あたしもお姉ちゃんたちみたいに抜群のプロポーションになるっち、ほとんど決定したみたいなもんやけねぇ♡☀

 

「ほんなこつ、そげんうまく行くもんやろっか?」

 

 涼子に言われて改めて、孝江は自分の胸を眺め下ろしてみた。

 

 確かに大きかった。前にもすでに計測済みなのだが、今の涼子がBサイズならば、自分たちは確実にEサイズはいっているに違いない――と。そのBサイズである自分の裸を、涼子はまったく臆する様子もなく、ちょっと前までひとりの兄だった元孝治たち四人に、今や堂々と見せつけていた。いずれ成長するものと、根拠薄弱ながら確信をしているようなので、かなり強固な楽観的未来図を、頭に抱いている感じでもあった。

 

 孝江は自分の左横にいる孝乃に、そっと尋ねてみた。

 

「なあ、なしてあたしたちって、こげんおっぱいが大きいとやろっかねぇ?」

 

「「「ぶうっ!」」」

 

 孝乃だけではなく、治花と治代も同時に噴き出した。それでもなんとか、気を取り直したらしい。こほんと軽く咳払いなんかをしながら、孝乃が孝江に答えた。

 

「そ、それはぁ……たった今言われてたった今思いついた推論なんやけど、おれじゃないあたしたちの男時代に体中に散らばっとった脂肪分が、謎の性転換ばしたときに全部胸んほうに移動したからとちゃうやろっか? やけん胸以外の両手両足っとか、男時代から比べて、すっごい細うなっとろうも☞☛」

 

「「「そうかもしれんばい♋」」」

 

 孝乃の推論とやらに、残りの三人は自分の両手両足を改めて眺めつつ、大いに納得の相槌を打った。

 

「あたしも体中の脂肪分ば、みんな胸んほうに持っていかんといけんちゃね

 

 涼子は涼子で、どうやら違う方向に解釈をしていた。


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