『剣遊記Z』 第五章 美女とヒュドラーと白鳥と。 (18) 「す、凄かぁ……♋」
そのあまりの威力に、孝治は剣を構えたまま、ポカンと水辺に立ち尽くした。それからしばらくして、美奈子に顔を向けた。
「……あ、あんたにゃ、動物愛護の精神はなかっちゃね♋ せめて自分たちが可愛がっちょうロバ並みに大事にしちゃりぃ!」
「そないなもん、ハナッからありまへんのや! ヒュドラーごときをトラといっしょにしたらあかんのやでぇ!」
「あっそ……☹」
明解なる返答を美奈子から受けて、孝治はそれ以上の文句をやめにした。
実際にあとが怖いから。そんな黙りこくった孝治に向け、美奈子が言ってくれた。
「そないなことより……あちらのほうを向いてもらえまへんか? うちぃ……見てのとおり……なんも着てまへんさかい☠」
それを美奈子が言うのなら、孝治もまったく同じ状態であるはずだが。
「うわっち! ご、ごめんなさい!」
とにかく慌てて、孝治は美奈子に背を向けた。
このあとすぐ、背後で美奈子の唱える呪文が耳に入り、孝治は恐る恐るの思いで振り返ってみた。
美奈子は白鳥に戻っていた。ついでに千秋と千夏の姉妹も、服を着ている最中だった。
「あっ! こらぁ! 見るんやないでぇ!」
「きゃん♡ 見ちゃいやですぅぅぅ♡」
ふたりとも、どう贔屓目に見ても、やはり色っぽさよりも幼児系でいた。それでも恥ずかしがって(真っ平らな)胸を隠す仕草が、なんだかとても可愛らしく見えたりして。 (C)2012 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |