『剣遊記]』 第二章 薔薇と愛妻の秘密。 (6) 未来亭に在籍をする魔術師――椎ノ木可奈{しいのき かな}は、現在自分の部屋にあるベッドの上。ひとりでゆったりと寝そべりながら、有り余る暇を持て余していた。
魔術師の黒衣は壁のハンガーにかけたまま。ブラジャーとパンティーだけの、かなりセクシーな格好をして。
「文句さこけんけど、未来亭におったら仕事さあぶれる心配ないずらけどぉ……暇んときは暇ずらねぇ〜〜☁」
などとひとりでつぶやいてから、可奈は今まで読んでいた週刊の女性誌を、床の上にポイと放り投げ捨てた。
なお、可奈の年齢は孝治よりひとつ上の十九歳。一見うら若き女性であるが、これでも可奈は、かって某所での務めを経験したことのある女猛者。あげくは山賊団の黒幕を演じた強者でもあった。
それがなんの縁あってか、今や未来亭の立派な一員。そのためだろうか。性格も以前よりかなりおとなしめ――と、もっぱらの評判であった。
「……そろそろ、おごっそう(長野弁で『飯』)するずらねぇ……☹」
いつまでも部屋のベッドでひとり寝しているわけにもいかないので、ここら辺りで昼食でも取ろうと、可奈は部屋から出る気になった。
もちろん黒衣は着用。
そこで階段を下りてから、可奈は知った。
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