前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記]』

第二章 薔薇と愛妻の秘密。

     (2)

 そのような、のどかな(?)食事の最中だった。

 

「孝治っ!」

 

「うわっち!」

 

 いきなり割って入ってきた、ひとりの男。

 

 軽装の革鎧を着用しているので一応は戦士なのだが、それよりも格段に特徴的な、黒いサングラス😎と中途半端なリーゼントの頭。

 

 孝治の先輩戦士――荒生田和志{あろうだ かずし}のご登場であった。

 

 孝治は慌てたりあせったりの思いで、大きく顔を見上げた。

 

「な……なんなんですか、先輩……☠」

 

 幸いにも――と言うか、今回の荒生田の関心は、孝治以外に向いていた。

 

「孝治っ! おまえ、裕志んやつば知らんね?」

 

(ははぁ〜〜、やっぱそうきたっちゃねぇ〜〜✐)

 

 二大特徴の件は脇に置く。それよりも戦士としてそれなりの実力を誇る男――荒生田が孝治に尋ねる質問は今現在のところ、その他にはないだろう。案の定だが、実家に帰っている裕志を、やはり先輩戦士が捜していたのだ。

 

 前述のとおり、裕志帰省の話は、荒生田にはまったく伝えていなかった。裕志は帰ったら話す気でいるらしいのだが。

 

 また孝治も未来亭の面々全員に、緘口令{かんこうれい}(しゃべっちゃ駄目⚠)を厳重に頼み込んでいた。このまた理由も、前述のとおり。その裕志の頼みを引き受けている孝治は、早速である先輩からの問いに対して、一切合切をとぼけるようにした。

 

「さあ? 裕志やったらきょうは朝から顔見てませんちゃけどぉ……ねっ、友美♡」

 

「えっ? え、ええ……☁」

 

 孝治は右目でウインク😉して突然話を振ったのだが、友美も調子を合わせてくれ、軽く苦笑いをしてくれた。

 

『友美ちゃんって、孝治に比べたら嘘ん吐き方、すっごうヘタっちゃねぇ〜〜☠』

 

 涼子からのツッコミには、孝治も友美も聞こえない振りで通した。

 

「で、裕志がどげんかしたとですか?」

 

 これまた本当はなにもかも知っているくせに、それをごまかすつもりで、孝治は先輩戦士に尋ね返してみた。

 

 確かにいつまでも隠し通せる話ではないが、今はまだ、時期尚早なので。

 

「裕志ん野郎ぉ〜〜☠」

 

 サングラスの奥で光る三白眼をゆがませ、ついでに歯ぎしりをうならせながら、荒生田が孝治に答えた。

 

「こんオレがせっかく新しいお宝ん地図ば見つけたっちゅうとに、肝心なときにおらんのやけねぇ♨ 後輩として実になっとらんばい!」

 

(またお宝ん話けぇ……たまにゃあ未来亭の一員としての務めば、きちんと果たしてほしかっちゃねぇ〜〜☂)

 

 孝治は内心で、深いため息を吐いた。

 

 荒生田が大のお宝好きな性分は勝手であるが、いつもそればかりで戦士の仕事を怠慢していることが、孝治と裕志にとっての頭痛のタネなのだ。

 

 実際無責任戦士の自分勝手には、ほとほと困ったものである。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system