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『剣遊記]』

第七章 薔薇の女神、ここに在り。

     (7)

 この一方で、涼子はこっそりと、緑の母娘の右脇に近づいていた。

 

 自分が見えない幽霊なのを承知で、祭子の顔を間近で見ようとしているのだ。

 

『べろべろばあ〜〜ってね♡ 新人類けぇ♡ 亜人間{デミ・ヒューマン}ってこげな風にして、新しい種族が増えるっちゃねぇ♥ で、祭子ちゃんにはどげな未知ん力があるとやろっか?』

 

 ところが涼子は、このとき寝ているはずの祭子がいきなりパチッと瞳を開け、ニコッと微笑んだ瞬間を目撃した。しかもしっかりと、視線は涼子に向いていた。

 

『えっ?』

 

 涼子は停まっているはずの自分の心臓が、ドキッと高鳴るような感覚を覚えた。

 

『い、今のなん? まさかやねぇ……赤ちゃんに幽霊のあたしんこつ……わかるはずなかっちゃよねぇ……? ふつうの大人でもわからんとに……☁』

 

 もちろんまだ赤ん坊である祭子が、涼子の疑問に答えてくれるはずもなし。いや、それ以前に幽霊からの問いに、いったい誰が答えられるのだろうか。


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