前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記15』

第五章 暗雲めぐる太平洋。

     (5)

「おやまあ、孝治はんやおまへんか☠ なんの用でっしゃろ♐」

 

「あ、あたしは、そのぉ……☁」

 

 内心で孝治を舐めている態度が見え見えな美奈子はともかく、秋恵は半分狼狽していた。

 

ヤバい現場を見られた弱味もあるのだろうけど。

 

これらふたり(美奈子と秋恵)の対照的な反応などに構わず、孝治は一席をぶってやった。

 

「おれの勘で、たぶんこげなことになるやろうっち思うて、蟹礼座さんにはうまいことば言うて、別の部屋で寝てもろうたとばい 正直勘が外れてほしかったっちゃけど、不幸にも的中してしもうたっちゃねぇ☠☠

 

 当然美奈子が噛みついた。

 

「それでは孝治はん☛☞ これはうちらを罠に嵌めはった、言うことでおますんかいな!♨」

 

 これももはや慣れの段階に至っているだろうとは言え、孝治(元男)を前にして、全裸仁王立ちの格好にて――である。

 

(おれかて、もう慣れたっちゃよ

 

 今や孝治も一歩も引き下がらず、堂々と全裸である美奈子に立ち向かってやった。ちなみにこちらも、オレンジ系ビキニのまま。この期に及んで着替えるなど、もう面倒臭くて――の心境なのだ。

 

「と、とにかく、蟹礼座さんはたまたまこん船に乗っただけの客人なんやけ、無用な揉め事は起こさんでほしかっちゃよ きっと今ごろ蟹礼座さん、こげなアホな騒動も知らんと、いい気になって寝とうっち思うっちゃけどねぇ♐

 

「いじんきたなかこつするばいねぇ☠ 孝治さん、性格悪かばい☢」

 

 秋恵も文句をプンプン😡と垂れるが、一応はあきらめらしい顔にもなっていた。

 

「わかったばい✄ きょうはもうきゃーなゆった(長崎弁で『疲れた』)け、ほんなこつ寝ることにするばいね

 

 それからややふてぶてしい態度ながらも、秋恵は捨てゼリフだけを一人前に残して、部屋からすなおに出てくれた。

 

問題は美奈子である。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system