『剣遊記15』 第五章 暗雲めぐる太平洋。 (19) 「新しい行き先はハワイどすか☀ これはまた、大いにけっこうなことでおますなぁ♡」
いきなりである目的地の決定に、美奈子は一も二もなく、大袈裟に賛同してくれた。
現在も超マイクロビキニ姿(やっぱり書いた☻)である天才魔術師は、らぶちゃんの甲板にサマーベッドを置き、バナナジュースをストローでご賞味中のご身分。大したバカンスを堪能中と言えた。
この姿のいったいどこに、天才魔術師の風格があると言えるのだろうか――にも関わらず、美奈子は堂々とほざいてくれた。
「えろうおいしい話どしたら、このうちに異論などおまへんのやで⚠ ましてやそれが蟹礼座はんのお望みであるのやったらなおのこと、このうちが反対などすることやおまへんがな⛒」
「まあ、わかってはいましたけどね☹☻」
(さっき蟹礼座さんといっしょやなかったんは、単にここで寝とったからなんやねぇ☕)
孝治は内心で、美奈子に話を持ち掛けた自分の行為を後悔した。なんだか話の進み具合が、それこそ雲の上に行ってしまったような気がしたので。だけど、本来この航海の主役であるはずの美奈子までが、まるで他人事のように旅の行き先をこの場のノリで決めるような成り行きも、正直なところ、前途に大きな不安を感じさせるようなものである。
もちろん美奈子は、このような孝治の気持ちなど、知る気もない様子。ぬけぬけと、ほざきの続きを言ってくれた。
「ほな、あとの航海のほうはらぶちゃんはんにお任せしまして、うちはもうちっと、日光浴を充分に堪能させてもらいまっせ☀☀」
「はいはいって……♐」
孝治はこれ以上の美奈子への相談はやめにして、さっさとブリッジの方向に足を向けた。なんと言っても船を動かす真の主役はこの船自身――らぶちゃんことラブラドール・レトリーバー号なのであるからして。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |