前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記15』

第五章 暗雲めぐる太平洋。

     (17)

 らぶちゃんはようやく、嵐の海を抜けた。太陽もサンサン☀と輝き、きょうは絶好の航海日和となった。

 

「やっと大シケも収まったっちゃね☀ で、蟹礼座さんはどげんなっとうとね?」

 

 ひさしぶりの陽光の下、甲板の左舷側に出た孝治は、自分の右横に並ぶ友美に訊いてみた。孝治も友美も今や言うまでもなく、お互い水着姿のままである。この表現、もう書くのやめようかなぁ✄

 

 これは置いて、友美は手すりから海面を覗き込みながらで答えてくれた。

 

「蟹礼座さんも、だいぶ良うなってきたみたいっちゃよ もう自分で歩けるようになったようやけ

 

「ほんなこつ蟹礼座さんっち、いったい何モンなんやろっかねぇ?」

 

 友美が返事を戻してくれたところで、孝治は胸に燻{くすぶ}っている疑問を再開させた。

 

「船乗りっち自分で言いようくせして船酔いに弱いなんち、おれ聞いたことなかばい☹ もしかしてなんか理由があって、正体ば隠しとんのやろっか?」

 

「まさかやねぇ〜〜

 

 友美はやんわりと、頭を横に振った。だけど、この場に同席している涼子(初めからずっといっしょにいた☻)は、なぜかノリノリの調子でいた。

 

『あたしも孝治とおんなじ疑問ば持っとうっちゃね✍ そやけど、今んとこなんも確証無いとやけどね おっと、噂ばすれば、当の本人が来たっちゃよ☞

 

「あっ……ほんなこつ☛」

 

 涼子が右手で、甲板の後方を指差した。孝治もすぐに気がついた。船酔いから回復したばかりだという蟹礼座が、船室からどうやら、自力で外に出てきたようだ。ただその足取りが、なんとなくふらつき気味であるのは、もう仕方のない話か。

 

「まあ、治ったっちゅうても、船は今も航行中なんやけねぇ☢ やけん、完全回復はまだまだみたいっちゃね……あれ?」

 

 ついでだが孝治は、こちらに向かって歩いてくる蟹礼座の両脇に、なぜか恒例であるはずであるの美奈子と秋恵の姿がないのを、とても変に感じた。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

 

inserted by FC2 system