『剣遊記W』 第六章 悪徳酒場の大乱闘。 (6) 「わからんっち?」
どうにか息を吹き返し、孝治は質問を再開した。しかし、これに対する沖台の返答は、どうにも要領の得ないものだった。
「そうや☛ あのアホ監督の野郎から袋ん中を覗くのを、厳重に禁止されとったさかいにな☠ そやねんから、うっかりこぼしただけで、あんなお仕置きが待っとったわけなんや☠」
孝治の胸に、さらなる疑惑がふくらんだ。
「それってもしかして……中身がまさか、麻薬っとか覚せい剤っとか、犯罪に関わる話やなかろうねぇ……☠」
すると沖台が慌てて周囲を見回し、口の前に右手人差し指を立てた。
「しっ! あんまり声に出して言わんほうがええで☠ 殺されるかもしれんさかい☠」
だけど孝治も、もはやあとには引けない気持ちになっていた。
「とは言うたかて、これはやっぱほっとけんばい☀ この町の衛兵隊に、早よ言うたほうがええんとちゃう?」
これに沖台が、頭を横に振った。
「簡単に言うもんやないで☁ 見たってだけやったら、なんの証拠にもならへんのやからなぁ☠」
「じゃあ、おれが探ってくるけ♐」
「お、おい! 孝治っ!」
沖台が止めようとするのも聞かず、孝治はバニーガール姿のまま、倉庫の裏から飛び出した。その背後から、沖台が舌打ちする声も聞こえていた。
「まったくけったいな女やで……あかん! 男やったわ♀♂」
それから沖台も――なぜかついては来なかった。八本の節足をガチャガチャとさせる音は、別の方向へと向かっていた。 (C)2011 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |