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『剣遊記W』

第六章 悪徳酒場の大乱闘。

     (15)

 涼子は瞳を、大きく丸く見開いていた。ついでに口のほうも、丸くポッカリの体だった。それでも孝治は、別に涼子を驚かす気はなかった。だけど涼子にしてみれば、いつの間にやら、うしろに誰かが立っていたものだったようだ。

 

 今や定番であるバニーガールの格好で。

 

 おまけに孝治の手には、いつもの愛用の剣が、元通りにしっかりと握られていた。これも涼子が驚く要因のひとつになったのかも。

 

『ど、どげんしたとぉ! 急にあたしんうしろに出るなんち……心臓ば停まったら、責任取ってよね!』

 

「もう、その手のボケには突っ込まんけ! それよか店長ば見んかったね!」

 

 孝治はとにかく、いきなり本題に突入した。いつもならここで、二言三言も言い返したいところ。だがその原因は、孝治自身にもわかっていた。

 

 要するに孝治はあせっているのだ。しかし今の孝治のセリフで、涼子にもすぐにピンときたらしい。すべての騒動の大元が。

 

『やっぱし孝治んせいやったんやね! おかげであたしたち、ひどい目に遭{お}うたっちゃけぇ!』

 

「ひどい目ぇ? なんがあったとや?」

 

 孝治の胸で、嫌な予感が暴走した。そんな孝治に涼子が、はっきり過ぎるほどの口調で言ってくれた。

 

『その店長が、友美ちゃんばさらって行ったっちゃよぉーーっ!』

 

「うわっち! ぬわにぃーーっ!」


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