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『剣遊記Z』

第三章 悪霊の棲む館。

     (4)

 これにて野外に残った者は、徹哉ひとりとなったわけ。それも早くから、暇を持て余している様子っぷり(?)。

 

「サ、サテ、サテハ南京{ナンキン}玉スダレ……ジャナインダナ。ボクハコレカライッタイ、ナニヲシタライイノカナ?」

 

ひとりで勝手に、自問自答を始めていた。

 

「ソ、ソウダ。コウスルンダナ」

 

 そのうち頭部に、なにかの打開策が発動したらしい。徹哉は堅い口調のまま、館の塀の外側を、右回りに歩き出した。

 

「ボ、ボクガコノ世界ニ来タ目的ナンダナ……」

 

 しかも歩きながらでひとりぶつぶつ、なにかをぼやき続けていた。

 

「マ、魔術文明ガ発達シテルコノ世界ニオイテ、風俗、事件、生活習慣ナドノ調査ガ目的ダッタンダナ。ソ、ソノ他ニモ、ボク自身ガ大イニ興味ヲ感ジテルヨウナ事象ナンカモ調ベテミタインダナ。デ、人ニ会ッタラ、オムスビノヒトツモメグンデモライタインダナ」

 

 廃屋敷の周辺は、悪霊を恐れてか、現在人っ子ひとりいなかった。

 

 だからこそ良かったのかもしれない。徹哉のこのような姿が人目についたら、絶対に『怪しい変人⚠』のひと言では、済まされなかったはずだから。


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