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『剣遊記Z』

第四章 悪霊大決戦!

     (7)

 とにかく美奈子は、これにて取蜂の呪縛から解放されたわけである。しかも我が身を奪還して、まず初めの第一声が、これだった。

 

「千秋っ! 千夏っ! 金のブレスレットを手に入れましたえーーっ!」

 

 孝治、友美、涼子の三人が、そろってズッコケた展開は、もはや言うまでもないだろう。

 

「悪霊んこつは眼中にもなかっちゃねぇ!」

 

 完全に唖然の心境で、孝治は美奈子に吠え立てた。

 

「少しゃあ恥じらいっちゅうもんば知れっちゅうと!」

 

「恥じらい……でっか?」

 

 孝治の叫びに、ようやく美奈子も反応した。それから改めて下を向き、自分が現在置かれている状況を見回す仕草。

 

「きゃあーーっ!」

 

 今ごろになってやっと、自分自身を認識したようだ。いつの間にか黒衣を脱がされ、野外でオールヌードにされている現状に。

 

「み、見らんといてんかぁーーっ!」

 

 さらに今さら遅いが、大慌てで(かなり大きい)胸を両手で隠し、その場にペタンとしゃがみ込む。

 

「千秋ぃっ! うちはいつ、服を脱いでもうたんでっかぁーーっ!」

 

 ここでようやく、慌て気味で駆け寄った弟子の千秋に、美奈子が半泣きの顔で尋ねた。孝治も初めて拝見する、いつも強気な美奈子の意外すぎる一面だった。

 

「そ、それが、でんなぁ……☁」

 

 隠す物をなにも持っていないので、体を張って両手を広げ、自分が盾{たて}になる格好で、孝治たちの目から美奈子の裸を守ろうとしている千秋が、弱りきった感じで師匠に答えた。

 

「師匠があん城ん中で悪霊に取り憑かれたとき、全部自分で脱ぎよりはったんや☢ 千秋かて難儀したんやで☃」

 

「はぁーーい♡ そんときのぉ美奈子ちゃん、とってもぉとってもぉカッコよかったさんですうぅぅぅ♡」

 

 ここに千夏までが加わって、美奈子にまるでフォローになっていないフォローをしてくれた。

 

「そんなんありなんどすかぁーーっ!」

 

 双子姉妹から事の成り行きを聞かされ、美奈子の顔が怒りであろうか。

 

「うわっち! 美奈子さん、本気モードに入ったばい!」

 

 孝治の立ち位置から見てもよくわかるほどに、顔面が一気に紅潮化した。


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