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『剣遊記Z』

第四章 悪霊大決戦!

     (6)

 それは一応置いといて、争うふたつの人格でもがく美奈子の体が、ついに塀の上から足を踏み外した。

 

 そのままドサッと、真下の地面に落下。幸い下には、やわらかい枯れ草が積もっていた。だから裸であるにも関わらず、美奈子は大きなケガもせずにかすり傷少々で済んだ模様。ところが落下は、さらにうれしい誤算をもたらした。

 

『うわぁーーっ!』

 

 落下の衝撃で美奈子の体から、悪霊取蜂がひょっこりと抜け出たのだ。

 

「うわっち? これってどげんこつ?」

 

 一部始終を見て仰天した孝治は、右横にいる友美に訊いてみた。

 

「……ふつうやったらこげなことって、有り得んとやけどぉ……☁」

 

 友美も瞳を丸くしていた。

 

「わたしの考えなんやけど、今回に限って元ん体の持ち主である美奈子さんが目覚めちゃったもんやけ、乗り移りが不安定になったとやろっか? そこに落ちた弾みで弱っちょった憑依の力が、決定的な打撃ば受けたんとちゃう?」

 

「ふぅ〜む、そげなもんけぇ✍」

 

 友美の推測に孝治は、一応納得してうなずいた。

 

「……にしてもやねぇ☛ これっちまさに奇跡やし、ついでにこれまた御都合主義な話の展開っちゃねぇ♐」

 

「それば言うたら駄目ばい☢」

 

「うわっち! そうやった☠」

 

 友美から注意をされ、大人の事情を察した孝治は、慌てて自分の口を両手で抑えた。


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