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『剣遊記Z』

第四章 悪霊大決戦!

     (4)

 困惑しまくっている孝治とは関係なしで、千夏の涙声による説得――のようなものが続いていた。

 

「美奈子ちゃぁぁぁん! あの絵描きのおじちゃんからぁ、金色のブレスレットさんもらいましたですうぅぅぅ!」

 

「なんじゃ、小娘がぁ!」

 

 対する美奈子の反応は、いまだ取蜂の行動原理のままだった。しかしそれでも、千夏は一向に構わないようだ。

 

「とってもぉ、とってもぉ、お綺麗なブレスレットさんですうぅぅぅ! 美奈子ちゃん、金さん大好きさんですうぅぅぅ♡」

 

「ふん! なに馬鹿んこつ言いよんじゃあ!」

 

 取蜂に憑依されている美奈子が、冷たい瞳で千夏を見下ろした。

 

「そんじゃあ、おまえがどうやら敬愛しちょる美奈子とやらの力で、おまえを吹っ飛ばしてやるけんのー!」

 

「うわっち! ヤバかぁ!」

 

 孝治は全身の毛が総立ちになるほどの身震いを感じた。

 

確かに取蜂は、変身魔術を使えなかった。だけども火炎弾の発射であれば、すでに嫌というほど拝見済みなのだ。無論取蜂は、とっくに火炎弾の構えを取っていた。

 

 ところが――だった。

 

「な、なにぃ! こんな馬鹿なぁ!」

 

 構えを取っただけで、美奈子の体はそれ以上、ピクリとも動こうとはしなかったのだ。

 

 恐らく取蜂も、自分が支配をしている女魔術師の体がいきなり動かなくなる事態など、まったく考えてもいなかったに違いない。

 

 これはひとつの、パニックと言えるのかも。


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