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『剣遊記12』

第五章 悪の宮殿、最終決戦。

     (7)

「どこだ! どこだ!」

 

 ヤクザどもが半分狼狽の感じ――初めっからその状態にあったのだが、とにかく周辺をキョロキョロと見回す動揺ぶりを見せていた。ついでに孝治は、半分ウンザリ気味。

 

「またこんパターンけぇ〜〜☹」

 

 そんな心境でもって、やはり周辺をヤクザといっしょになって見回した。無論ギターを奏でている者は、あの小心魔術師を置いて、他にはいないだろう。

 

「うわっち! あそこっちゃあーーっ!」

 

 もはや周りが全員敵の状況も棚に上げ、孝治は原っぱの一角に建っている塔のてっぺんを、右手で指差してやった。

 

「ああ、おったぁーーっ!」

 

 孝治――敵から言われたとおり、ヤクザ連中も一斉に、三階建ての高さがある塔の屋上に注目した。

 

「あいつ……なんしよんやろっか?」

 

 塔のてっぺんでは孝治の予測どおり。黒い魔術師の衣装を着ている青年が、ギターをかかえての演奏を行なっていた。

 

「裕志ん野郎……なん考えよんね、ほんなこつ☁」

 

 孝治はさらに、唖然の思いでつぶやいた。本来なら『唖然』とは、呆れてなにも言えなくなる――と言う意味なのだが。

 

 それはとにかく、一応絵になると言えば、それなりに絵になる光景。つまり、典型的なヒーローの登場の仕方。だけど、まるでこの場の雰囲気にそぐわないギター魔術師の唐突な登場の仕方でもあった。孝治はまさに、瞳が点の思いとなるしかないのだ。

 

 もっともそのような状態は、ヤクザ連中も同様の模様。彼らもケンカの途中なのを忘れたかのように、ただ呆然と、ギターを奏でる裕志の演奏に、全員で注目していた。

 

 その裕志は塔のてっぺんでなにやらギターを奏でながら、しきりにうしろで控えている人物に尋ねているようでもあった。


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