『剣遊記12』 第五章 悪の宮殿、最終決戦。 (6) 戦士が本職とはいえ、孝治ひとりにヤクザどもが、およそ十五人。
彼らは女戦士(以前は男だったとは知らないだろう)が本気で怒るなり、逆に周辺から仲間を呼び集め、数を頼んでの逆襲に転じてきた。
そんな場面展開で現在の場所は、久留米市内の繁華街から、かなり離れた所。なぜか陣原家の宮殿近くにある、郊外の原っぱとなっていた。ここには古い石造りの塔が一軒、ポツンと高くそびえているだけだった。
話が始まる前にひとつ。孝治は荒生田から、東天一味ば発見したら、ここまで連れて来るっちゃ――と、なぜか指示をされていた。
理由は教えてくれなかったのだが。
「こいつは女ひとりばぁーーい! やけん構わんけ裸にひん剥いちまうったぁーーい!」
この場では一応、一番の兄貴分である阿羽痴が、理性を完全にかなぐり捨てた感じ。大きな雄叫びを上げていた。
「やれるもんならやってみんしゃーーい!」
しかしそこは女戦士――繰り返すけど、孝治は本職の戦士である。迂闊にかかれば剣で血を見るとあってか、連中は大人数で、孝治を取り囲むだけだった。
恐らく誰もが本心では怖がって、女戦士――孝治に手を出そうとはしないのだろう。
情けない。
おまけに彼らの相手は、孝治だけではなかったのだ。
「眠れ!」
ここで威力を発揮した力が、友美の睡眠魔術。あっと言う間に四、五人がバタバタと、原っぱでお眠りの有様となっていた。
『やるっちゃねぇ☆ あたしかてぇ☞☀』
「わわぁっ! 地震やぁ!」
さらに大地を震わせる、涼子のポルターガイストによる二重攻撃。これにて馬鹿ヤクザどもが全員、たちまち浮き足立ち状態。
やはりヤクザなど、ひとりではなにもできない弱虫の集まり。もともとから彼らの行動原理は、ただ金、金、金。ついでに付け加えれば、弱い者いじめしか能の無い、最低の役立たず。存在価値絶無な野郎どもなのだ。そのような連中であるからして、自分が真剣勝負で戦うケースなど、夢にも考えたことなどないであろう。
けっきょく状況は、ヤクザの誰もが自分から手を出そうとは絶対にしない、単なるにらみ合いの場と化していた。
そんなところで、場違いにも――だった。
どこからともなくポロロォ〜〜ン♪ ポロロォ〜〜ン♪と、ここでもなぜか聞こえるギターの音色。 (C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |