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『剣遊記12』

第五章 悪の宮殿、最終決戦。

     (5)

「そ、そげなん……☁」

 

 今度はなぜか、阿羽痴のほうが口ごもる番となった。もっともそのような状態になったからと言って、精いっぱいであろう虚勢自体は変わらなかった。

 

「……だ、だいたいオレたちがワルやりよんのは、世間がオレたちば偏見の目で見るんが悪かったい! 人ば不良や町の恥やっちゅうて、いつだってオレたちゃ村八分の扱いなんばってん!」

 

「そうたい、そうたい!」

 

 ここで調子に乗ったか。顔面ニキビだらけの若造が、口を尖らせつつ孝治に喰ってかかった。

 

「おれかてガキんころから貧乏で、碌に勉強もできんかったんばい! やけん極道になるしかなかったんやけん!」

 

「そいたい、そうたい! 世の中が悪かやけ、おれたちかて悪かこつしてもええったい!」

 

「おまえらなぁ〜〜♨」

 

 彼らの言い分――と言うか、言い訳を聞いた孝治は、長い黒髪がビビビッと、天に向かって逆上がる思いになった。これにはついさっき、自分も髪を逆立てた涼子でさえも、今は反対でビックリの顔になっていた。

 

『孝治がほんなこつ頭に来ちゃっとうばぁい!』

 

 その驚きは、友美も同様であった。

 

「ええ……たぶん、でもここまで本気で怒った孝治なんち、わたしかてあんまし見たことなかったっちゃよねぇ♋」

 

『へぇ……でもなんか、おもしろそうっちゃあ〜〜☻』

 

 このようにして、いつもの野次馬気分で見つめている、ふたり(友美と涼子)の前だった。ついに孝治の雄叫びが炸裂した。

 

「しゃーーしぃーーこと、でたんおらぶんやなかぁ! おめえら散々悪さやらかしといて、それで世間様から優しか目で見てほしかなんちムシのええこと、ほんとの本気で思うちょうとけぇ! こんカベチョロ野郎どもぉ! いくら昔が貧乏やからっち、今がワルやったらそげなこつ関係なかっちゃけねぇ! こげんなったらこんおれがてめえら全員相手してしてやるっちゃけ、全員こんおれについて来んねぇーーっ!」


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