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『剣遊記12』

第五章 悪の宮殿、最終決戦。

     (3)

「じゃあ街ばやめて、どっかの山に行くっちゃね☝」

 

 これにてかなりの手間と時間がかかりそうだが、山捜しの決心を、孝治は改めて固め直した。そこへ友美が、通りの前方を右手で指差し、そっと孝治の右耳に口を当てた。

 

「あそこにおるの、あいつらっちゃよ☜」

 

「あいつらけ?」

 

 孝治も友美の人差し指の先に瞳を向けた。

 

「そうっちゃよ☚ 前に孝治に因縁ばつけた、あのヤーさんたちばい☠」

 

「ほんなこつ♋」

 

 言われてよく見れば確かに、あまり思い出したくはないのだが、現在捜索中である馬鹿ヤクザの面々であった。その彼らがなにやら、お買い物の真っ最中。もっとも連中の場合、まともに代金を払う気など、もともとから微塵もない模様。

 

「よっしゃ☻ こんだけもらっとくばい♐」

 

「お代はツケにしときや☢」

 

「そげなぁ〜〜☂ うちが困りますばってぇ〜〜ん☃」

 

 店の従業員が泣き顔で訴えても無駄であった。

 

「せからしか! ガタガタぬかしたらぼてくりまわすばい☠☠」

 

 こんな調子であちこちの店から食べ物や飲み物を巻き上げるという、乱暴狼藉のやりたい放題。つまりがレベルの低い無銭飲食やかっぱらいの類である。おまけに無理にでもやめさせようとすれば、ヤクザどもがたちまち数を頼んでの(十人以上)、威圧の振りまくりは明白な状況なのだ。

 

『あったまくるっちゃねぇ♨ あいつらほんなこつ、無法集団やない♨』

 

 涼子が彼らの傍若無人ぶりを見て、憤慨のあまりか髪を逆立て、おまけに湯気まで昇らせていた。

 

『あれがヤッちゃんの実態ってもんちゃねぇ♨ やってることは、ただの弱い者いじめ♨ いったい何様のつもりやろっかねぇ♨』

 

 このまま怒るに任せていたら、涼子はきっと、ポルターガイストを無制限でぶち撒けるに違いなし。もちろんさすがに、そのような実力行使は、近所迷惑どころではない話。孝治は慌て気味になって、なんとか涼子を引き止めた。

 

「こ、ここはおれにガツンっち言わせちゃりや☆ あいつらにゃ言いたいこつ山ほどあるっちゃし、ついでに東天のことも訊きたいっちゃけ✍」

 

 そこまで言い切ると、自分から率先して、孝治はやりたい放題中であるヤクザ連中に足を向けた。


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