『剣遊記12』 第五章 悪の宮殿、最終決戦。 (2) 陣原家の顧問である魔術師の失踪は、ただちに久留米市の全衛兵隊に連絡された。それからすぐに、市内で大掛かりな捜査網までが敷かれる運びとなった。
もちろん派遣されている立場である未来亭の面々たちも、否応なしで捜査に協力させられる破目となっていた。
「なしておれたちまで、あいつの逮捕の応援ばせんといけんとね? これはもう久留米だけの内部問題なんやけ、おれたちはもう帰ったかてよかろうっちゃにねぇ☠」
孝治もブツクサと文句を垂れながら、久留米市内を広い範囲に渡って歩き回っていた。友美と涼子もいっしょに。
「まあ、仕方なかっちゃよ☺ せっかく店長の指示で派遣されとんのやけ、ここは全面協力ってことっちゃね☀」
友美が孝治の右横を並んで歩きながら、繁華街を往来している人々をひとりひとり、入念に顔を眺め回していた(ある意味失礼)。もっとも逃亡中である魔術師が、このような雑踏に隠れているのかと言えば、それはそれで根拠の薄い話であるのだが。
これに気がついてか、涼子もひと言。
『ここば捜すんはもうやめて、近くの山っとかを捜したほうがいいんとちゃう? 逃亡者の原則って、だいたい山ん奥に逃げ込んじゃうもんなんやけねぇ♐』
「それもそうっちゃねぇ、そもそも街ん中ば捜せなんち言うたんの、荒生田先輩なんやけどねぇ……肝心の先輩は、どこ行ったっちゃろっか?」
涼子の意見に耳を傾け、孝治は考える素振りで、下アゴに右手を当てた。
「だいたいそもそも、東天の野郎、なして陣原家から姿ば消したんやろっかねぇ? あいつ、おれたちにサラマンダーばけしかけて、それでおれたちが片付いたっち思うちょるはずやけ、てめえ自身が逃げる必要なんち、いっちょもなかっち思うっちゃけどねぇ……☁」
「そうっちゃねぇ……☹」
友美も孝治と、たぶん同じ疑問で頭がいっぱいになっているらしかった。やはり孝治と同じ仕草そのまま、下アゴに右手を当てていた。
『まっ、ここで考えたかて、なんの解決にもならんっち思うっちゃね★ とにかくそん魔術師ば捕まえたらわかることやけ✌ そげん言うことで、早よ山んほうに行くっちゃよ✈』
「涼子っち、何事も前向きっちゃねぇ☺」
根の明るい幽霊から、急ぎ立てられる格好。孝治は深く考えるのをやめにした。確かに幽霊少女の言うとおり、今はその魔術師と一味の捜索が先決なのだから。 (C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights reserved. |