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『剣遊記12』

第五章 悪の宮殿、最終決戦。

     (25)

 そんな孝治たちの見ている前だった。当の荒生田が吠えていた。

 

「へい☆ そこの大魔術師の先生っちゃよぉ☺♡ あんたの邪眼とやら、大したもんだよ、けっこう毛だらけ猫灰だらけ、あんたのお尻は○○だらけ★ ついでに近所の町中公害だらけっちゅうてやねぇ♐ で、どげんや? どうせやったらそん術ば、こんオレにもかけてみたらどげんっちゅうとやが、もっと戦力ば倍増ってもんやけねぇ☠」

 

 これはなんだか、投げヤリとでも言うべきか。それとも聞きようによっては、『オレば仲間にして♡』と取られても仕方がないような。とにかく非常識極まりないセリフを、荒生田が東天に投げつけた。

 

「うわっち! 先輩、なん言いよんやろっか?」

 

 これに孝治は、瞳がさらに極小の点になる思いがした。またその思いは、問題である東天も同じようだった。

 

「な、なにぃ? おまえは本気で、そのような戯言{たわごと}をぬかしておるのかぁ?」

 

 完全に人として当然なる疑問を、東天が荒生田相手に尋ね返した。これに当のサングラス😎戦士は、相変わらずの大言壮語で吠えるのみだった。

 

「本気かウソっ気か、それこそおまえさんの邪眼とやらを、こんオレにかけてみればよかろうが★ それともおまえさんの邪眼とやらは、ニセモンなんけ?」

 

「ふん、笑止っ♨」

 

 荒生田の明らかなる挑発で、東天のほうが逆に、本気となったようだ。

 

「ならば見るがいい! 貴様に邪眼を与えて、そこの馬鹿な象といっしょに吾輩の僕{しもべ}となるがよいわぁ! 見よぉ! 吾輩の両眼を!」

 

 結果、再びラリーにかけたモノと同じ目線になって、魔術師が今度は、黒いサングラスをかけた戦士をにらみつけた。だけど、行動にやや冷静さを欠いている理由は、やはり荒生田の挑発で、かなり頭がグラグラこいているせいなのかも。

 

 それでも端で見ているヤクザ連中は、なんの疑いもなし。魔術師の勝利を確信しているようでいた。

 

「へへっ☀ 先生はまたやってくれるばってんねぇ☻」

 

「あのかべちょろ野郎、裸踊りかそれとも、犬の真似でもワンワンさせよっかいねぇ☻☻」

 

 お次は自分たちで、思いどおりに操ってやろうと言う気にまでなっていた。

 

 ところが――であった。

 

「なんしよんね? オレはさっきからいっちょん平気っちゃけね✌」

 

 まさに先ほどから変わらぬとおり、荒生田は荒生田のまま。逆に東天のほうこそ、なぜかムッツリ状態になっていた。

 

「…………」

 

「せ、先生……?」

 

「いっちょん黙っちょらんで、なんか言うてくれんですけ?」

 

 これを変に感じたのであろう。東天のうしろにいる利不具ともうひとりのヤクザが、とうとう業を煮やしたようだ。ふたりして魔術師の右と左の肩を、それぞれポンと軽く叩いてみた。そのとたん、どういうわけだか棒がまっすぐ倒れるかのごとく、東天がバタンッと仰向けに倒れ、そのまま床の上で大の字となった。

 

「げえっ! 先生どげんしたとですけぇ!」

 

「先生、気ば確かにしてくだせえ!」

 

 もはや、いくらヤクザどもが叫べど揺すれど、東天の体はそれこそピクリはおろか、一ミリたりとも動こうとはしなかった。


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