『剣遊記12』 第五章 悪の宮殿、最終決戦。 (21) 「そうたい、貴道が帰ってくるっちゅうことは、実はわしかて知っておったことばってん✌」
いまだ囚われの身となっている陣原公爵も、このとき彼なりの余裕が生じたようだった。ここでどうやら、今まで隠していたらしい事情を、勝手に話し始めてくれた。これだって、誰も頼んではいないのだけど。
「この東天が胡散臭か人物っちゅうことは、こん家に来てからすぐに気ぃついとったと☛ やけど中央魔術省お墨付きの派遣者ともなれば簡単には追い出せんし、また容易にしっぽもつかめんかったとやけぇ☢ やけんわしは貴道に密かに頼んで、東京と京都で東天のことば調べてもろうたとばい♐ ばってん、もちろん未来亭さんのご協力かていただいてばいね✌」
『わかったぁ! そげんことやったっちゃねぇ✌』
公爵の話をだいたい聞き終えたところで、なぜか涼子が孝治と友美だけに向けた大声を張り上げた。
恒例で、もともとふたりにしか聞こえないけど。
「な、なんが『そげんこと』っちゃねぇ?」
「そうっちゃよ☹ ビックリさせんどって☹」
周りの人々が、耳目を公爵に集中させている状況が幸い。孝治と友美はそろって、涼子にこっそり文句を言い立てた。だけど当の幽霊少女は、全然平気な顔付きのまま。ふたり(孝治と友美)だけに顔を向け、自分が『わかったぁ!』と言った理由を吹聴してくれた。
『ほらぁ、ずっと前やけど、あたしと孝治と友美ちゃんで、この陣原家に封書ば届けたこつあったやない☝ で、そんときの封書っち、けっきょくそんときは中身ばいっちょも見らんかったっちゃけど、きっと黒崎店長からこんこつ書いとったんやと、あたし思うっちゃ✍ きっとたぶん、あの貴道さんの調査報告やったっちゃよ✑✒』
「なるほどぉ〜、そうけぇ〜〜♦♢」
涼子の推理に孝治は、なんだか納得の気持ちとなってきた。
確かに涼子の考えは、確証に乏しい内容であった。しかし今、瞳の前で起こっている話の展開を見てみれば、それがかなり真実に近いと言えそうだ。
「で……そんときからとっくに、今ん話が始まっとったっちゅうことけぇ……でもってさらに今の今が、そん話のクライマックスってとこっちゃね♐✈」
『そうそう、そげんこと!』
ここで涼子がはしゃぐ『そげんこと』とは、自分たちとは関わりが薄い、遠くの貴族のお家騒動だと思っていた話。それが実は、水面下で様々な動きが行なわれていたという、まさに今の展開なのである。
この間にも話の展開そのものは、今まさにクライマックスを迎えようとしていた。 (C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |