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『剣遊記12』

第五章 悪の宮殿、最終決戦。

     (18)

 もちろん『前』と『現』であるふたりの陣原家当主を始め、誰もが返事を戻すどころか、振り向きさえもままならない有様の中なのだ。しかし門番の次のセリフが、この先のストーリーを、大きく変動させる原動力となった。

 

「あ、あのぉ……北九州市からぁ……未来亭の店長っち名乗る方がお見えになられましたばってぇ〜〜ん♋」

 

「うわっち!」

 

「ゆおーーっし! 未来亭の店長けぇ★」

 

 この報告には、孝治や荒生田たちのほうが仰天した。

 

「そげな話、聞いてなかっちゃよぉ!」

 

 さらに裕志の驚き声が、一同のビックリを思いっきりに代弁した。だけども東天とその配下どもに、未来亭の名が通じるはずはなかった。

 

「『みらいてい』の店長だとぉ? なんじゃそりゃ?」

 

 しかし彼らが人質にしている陣原公爵は、なぜか初めっから知っていたかのごとくだった。口の右端にニヤリと、不敵そうな笑みを浮かばせていた。

 

「やっと来てくれたとか☻」

 

「父上っ! 未来亭の店長が来られるなんち、僕かて聞いておりませんでしたばい! これはいったい、どげなこつ……♋」

 

 長男である貴明も、驚き顔で父に顔を向けた。そのときになって、まぎれもない未来亭の店長――黒崎氏本人が、事件が起こっている真っ最中である、陣原家の大広間に、堂々と参上した。

 

「失礼、どうも取り込み中のようだがね、勝手に上がらせてもらいましたがや」

 

 いつもの青い背広に、赤いネクタイ姿であった。しかしきょうは左横に、孝治たちも見知らぬ戦士(軽装鎧を着用。腰のベルトには中型剣を装備)をひとり連れていた。

 

 おまけにその顔自体が、孝治や友美たちにとっては、大きな驚きの元となった。

 

「た、貴明さんによう似とうばい……あれっていったい、誰なんやろっか?」

 

「さあ……わたしも知らんちゃけど✍ ほんなこつ孝治ん言うとおり、貴明さんとウリふたつっちゃねぇ✄」

 

 そんな風で、孝治と友美がささやき合っている前だった。

 

「あっ! お、おまえは!」

 

 陣原家現当主である長男の貴明は、その自分によく似ている人物を知っている様子でいた。なんとなく当たり前のような気が、孝治と友美はしているのだが。


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