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『剣遊記12』

第五章 悪の宮殿、最終決戦。

     (16)

「ふふふっ☠ 確かにこの吾輩は、この陣原家の顧問役を拝命した✍」

 

 ここで誰からも訊かれてはいないのに、なぜか東天が長くなりそうな口上を、勝手に始めてくれた。

 

「正直に申し上げて、吾輩はこのような田舎貴族の顧問役など、まったくもって迷惑千万☠ 真にもって、不本意な役目でしかなかったのですぞ✄ 中央で高度な魔術の研究を極めたこの吾輩が、なぜにこのような地方に都落ちしなければならないのかと☢」

 

「そりゃ大方、左遷ってとこやなか? 中央でなんがあったんかは知らんとやけど、あんたのそん性格から考えてみたら、さも有りなんやねぇ♐」

 

 孝治の横槍で、東天の体が一瞬だけど、ビクッと動いたように感じられた。それでもとにかく、予想どおりの長広舌は続いた。

 

「と、とにかく……☁」

 

「これっちなんか、こいつん腹ん中で、よっぽどの鬱憤でも溜まっちょったんやろっかねぇ?」

 

 孝治もつぶやきを続けた。

 

「……せ、せっかく赴任をしてきたのですから、この地でなんらかの力を得て中央に返り咲くことも考えねばならぬ✐ それには陣原公爵、あなたのお力添えが必要なのですよ」

 

「……要するに、陣原家の資産に目ぇ付けただけんことやろうが☠」

 

「ふふっ☠ そうとも言えますな☻ あえて否定はしません✌」

 

 当の陣原公爵からズバリと図星を突かれたにも関わらず、それでも魔術師の余裕は揺るがなかった。

 

「とにかくあなた様には、吾輩の指示に従ってもらいますぞ☞ この陣原家の財産管理人に、この吾輩を任命するのだ!」

 

 ところがさすがは、貴族家の元当主。気丈ぶりなら、こちらも負けてはいなかった。

 

「わしが断るっちゅうたら、いったいどげんするっとや?」

 

 これには東天が、多少のようだが、ムカつきの顔を見せていた。

 

「そ、そのときは、この陣原家がお家断絶となるまでのこと! 現当主に謀反の疑いありと、吾輩の報告しだいで中央政府からの処分が下されるでしょうからな☻☻☻」

 

 孝治はここで、すべてがわかったような気になった。

 

「なんね、けっきょくこれからの策謀予定ば、あけすけと打ち明けとうわけやない♋ 自分で自分の手ん内ば、思いっきりバラしちょうわけっちゃねぇ☹」


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