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『剣遊記12』

第五章 悪の宮殿、最終決戦。

     (14)

「東天! 貴様はもう、この陣原家の顧問やなか! すぐこん家から出て行きんしゃい!」

 

「ふふっ☻ これはまた笑止☠」

 

 陣原家の現当主からはっきりと宣告されているのに、東天の態度は、ふてぶてしいの一語に尽きていた。

 

 もはやこの魔術師には、仮にも顧問としての忠誠心が、まったくと言ってよいほどに感じられなかった。

 

「あなたにはこの吾輩がいかなる者なのか、いったいわかっておられるのですかな? 簡単に申し上げれば、中央の魔術省より派遣をされた、神聖なるお目付け役なのですぞ☻☻」

 

 そうだ、そうだと、東天の右横に控える利不具も、その言葉にうなずいていた。

 

「そもそも、このような田舎のカッペ貴族ごとき、中央に歯向かう度胸などございますまい☠ 吾輩の報告の仕方しだいによっては、お家お取り潰しも簡単なことでございますからなぁ☠☠」

 

「そして家ば取り潰して、乗っ取りば謀るんが目的っちゅうことやね☟」

 

「なに!?」

 

 このとき、話の途中で割り込んできた者たちが、未来亭戦士の一行だった。全員がパオーーッと、象に跨っている格好で。

 

 もはや超法規的緊急事態とばかり、侍従長の許可を得るまでもなし。第一声を発した荒生田と博美、孝治、裕志たちが顔をそろえて、宮殿の中――大広間まで入ってきたのだ。

 

 まさしく象のラリーごと。

 

 そんなある意味の狼藉三昧を見た利不具が、粋がってわめき出した。

 

「な、なんやぁ! 屋敷ん中まで怪物ば入れてからにぃ! てめえらには常識っちゅうもんがなかばってんけぇ!」

 

 もちろんこのような輩の戯言{たわごと}など、耳に入れる必要もなし。

 

「やなかーぎー野郎は黙っとけぇ! いったーらに非常識呼ばわりされるほど、わったーらは落ちぶれてねえんだばぁよ! グダグダ言ってっと、ラリーにばんない踏みつぶさせりんどぉ!」

 

「ひ、ひい!」

 

 逆に博美のカン高い一喝が、しょせんは街のチンピラごとき、瞬く間に萎縮をさせた。つまりがここでも、亀を想像してください。

 

 ところが突然である象の乱入を目の前にしても、東天だけは最初の一瞬驚いただけでいた。

 

「ふ、ふん……高が畜生ごとき、何頭連れてこようが、この吾輩が恐れるとでも思っておるのか☻ こういうときのことも考えて、とっくに策は取ってあるわ☛」

 

 むしろ開き直りを丸出し。配下である利不具に、横にらみでの目配せをしていた。

 

「は、はい! 連れてきんしゃい!」

 

 にらまれた利不具はまだ象と博美に怯えていながらも、大きな声で、広間の脇にあるひとつのドアに呼び掛けた。

 

どうやら東天一味は屋敷内の他の場所にも、仲間を配置しているらしかった。

 

そのドアが、外側からガチャッと開けられた。


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