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『剣遊記12』

第五章 悪の宮殿、最終決戦。

     (11)

「おらぁ! 早よここば開けんけぇ!」

 

「こん門ば叩っこわすばぁーーい!」

 

 塔の一階には、大きな門が構えられていた。そこは内側から鍵が架けられていて、ヤクザどもがいくら騒いだところで、門はビクとも動かなかった。

 

「こげんなったら構わん! 火ば点けぇ!」

 

 ついにしびれを切らしたらしい阿羽痴が、物騒な戯言{たわごと}を言い始めた。

 

 それと同時だった。

 

 内側から鍵がガチャッと解かれたようで、観音開きとなっている門の扉がギギィ〜〜っと気味の悪い音を立て、大きく前向きに開放された。

 

「わわぁーーっ!」

 

 ヤクザどもが悲鳴を上げた展開も道理。中から出てきた者は、なんと巨象に跨っている、女戦士の博美であった。

 

博美と荒生田は塔の一階に、象のラリーも入れていたのだ。

 

まあ、塔自体がもともとからけっこう大きかったので、このような無謀極まる作戦も、ある意味可能だったわけ。

 

それはとにかくとして、博美が高い雄叫びを上げた。

 

「ガタガタじわじーせんでも、こっちから出てやるばぁよ! あったーらを成敗するためにさー☠」

 

「な、なんや、こいつらぁーーっ!」

 

 さらにまたも現われた巨象の雄姿で、阿羽痴を始めヤクザども全員、度肝を抜かれたようだ。もう何度もラリーを見ているはずなのに、さすがに建物の中から出てくるなど、予想の範囲外であったのだろう。

 

 ついでに今や、彼らからほって置かれ状態にある孝治も、この場で二メートルのジャンプをやらかした。

 

「うわっち! 博美さんはとにかく、ラリーまでここにおったんねぇ♋」

 

 これも繰り返す。孝治は荒生田から、作戦の話はほとんど教えられていなかった。だからこちらも、心の準備どころではなし。

 

『なんかようわからんちゃけど、もうこん機に乗じて大暴れするしかなかっちゃやない?』

 

「そ、そうっちゃね☻」

 

 ここは悪魔のささやき――ならぬ、幽霊涼子からのお言葉に従い、まさにそのとおりにするしかない状況。そんなものだから孝治は簡単に(もともと単純思考だし)、見事その気になっていた。

 

「ほんなこつ、もう暴れるしかなかぁーーっ!」

 

 もはや後先なにも考えず、剣を振ってヤクザどもの背後から飛びかかるのみだった。

 

「うわっちぃーーっ! タマ取ってやるっちゃあーーっ!」

 

 雄叫びにもまったく、意味合いなし。頭上では浮遊の術で浮いている友美が、嘆き混じりの深いため息を吐いていた。

 

「なんかまた、いつものワンパターンになっちゃったみたい☹ わたしたちってほんなこつ、進歩ないっちゃねぇ〜〜☂」


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