『剣遊記12』 第五章 悪の宮殿、最終決戦。 (10) 「あ、ああ……☺」
荒生田から言われたとおり、博美がこれまたすなおな態度で、塔の奥にある部屋まで引き下がった。しかしもちろん、純然たる戦いが始まるともなれば、全身を流れる戦士の血が、再び大いに騒ぎ出す――と言ったところだろう。
「まあ、あったーらが襲ってくるってんなら、まさに計画どおりって感じばぁよ☠ しなさん程度に痛めつけてやるだわけさー☠ じゃあ、おれは行くしようね!」
博美は不敵な笑みを浮かべながら、塔の三階から降りようとした。その直前、荒生田に振り向き直した。
「おれって……ただぐてー勇敢ないきがー(男)だけが、じょーとーなんて思ってねえ✄ やーみてえに無謀とは無縁で、頭がいっぺーじょーとーな戦士ってのも、おれの独断と偏見でも、けっこう好感度抜群だわけさー✐」
それから博美が、軽そうな流し目を、荒生田にチラリと贈った。勇猛果敢で名を馳せる豪傑女戦士がホロリと見せる、意外過ぎる一面であった。
またその瞳を受けた荒生田も、すでにいつもの口調に戻っていた。
「ありがとっちゃね✌ オレもすぐ、あとから行くっちゃけ✈」
キラリと前歯を光らせ、ニヒルな笑みを浮かべる色男ぶり。
「あのぉ〜〜先輩、ぼくはいつまで、ギターば弾きよったらよかでしょうか?」
ここで無粋にも、裕志が困りきった顔で尋ねてきた。荒生田はこの後輩の問いに、ニヒルから一転。打って変わった、ギロッとにらむような顔付きとなった。
「おまえは戦闘でいっちょも役に立たんのやけ、ここでずっとギターば弾いちょけ☜ 戦いの山場ば盛り上げんのに、音楽は絶対の必需品なんやけな✌ では、さいなら、さいなら、さいなら✌」
「そげなぁ〜〜☂」
相も変わらず、後輩を泣かせてばかりの荒生田であった。 (C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |