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『剣遊記12』

第五章 悪の宮殿、最終決戦。

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「あ、ああ……☺」

 

 荒生田から言われたとおり、博美がこれまたすなおな態度で、塔の奥にある部屋まで引き下がった。しかしもちろん、純然たる戦いが始まるともなれば、全身を流れる戦士の血が、再び大いに騒ぎ出す――と言ったところだろう。

 

「まあ、あったーらが襲ってくるってんなら、まさに計画どおりって感じばぁよ☠ しなさん程度に痛めつけてやるだわけさー☠ じゃあ、おれは行くしようね!」

 

 博美は不敵な笑みを浮かべながら、塔の三階から降りようとした。その直前、荒生田に振り向き直した。

 

「おれって……ただぐてー勇敢ないきがー(男)だけが、じょーとーなんて思ってねえ✄ やーみてえに無謀とは無縁で、頭がいっぺーじょーとーな戦士ってのも、おれの独断と偏見でも、けっこう好感度抜群だわけさー✐」

 

 それから博美が、軽そうな流し目を、荒生田にチラリと贈った。勇猛果敢で名を馳せる豪傑女戦士がホロリと見せる、意外過ぎる一面であった。

 

 またその瞳を受けた荒生田も、すでにいつもの口調に戻っていた。

 

「ありがとっちゃね✌ オレもすぐ、あとから行くっちゃけ✈」

 

 キラリと前歯を光らせ、ニヒルな笑みを浮かべる色男ぶり。

 

「あのぉ〜〜先輩、ぼくはいつまで、ギターば弾きよったらよかでしょうか?」

 

 ここで無粋にも、裕志が困りきった顔で尋ねてきた。荒生田はこの後輩の問いに、ニヒルから一転。打って変わった、ギロッとにらむような顔付きとなった。

 

「おまえは戦闘でいっちょも役に立たんのやけ、ここでずっとギターば弾いちょけ☜ 戦いの山場ば盛り上げんのに、音楽は絶対の必需品なんやけな✌ では、さいなら、さいなら、さいなら✌」

 

「そげなぁ〜〜☂」

 

 相も変わらず、後輩を泣かせてばかりの荒生田であった。


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