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『剣遊記番外編U』

第五章 剣豪伝説の曙。

     (2)

「おまえ、あげーなとこで催眠術……じゃろうな、たぶん……使ったんじゃろ☠」

 

「あっ♡ やっぱ、わかってもうたんやなぁ♡」

 

 大阪市衛兵隊をあとにする道すがら、板堰から眼光鋭く指摘をされた千恵利であった。ところが彼女の反応ぶりは、やはりあっけらかんとしたものでいた。

 

「そやかてあたし、魔神なんやもん♡ あんな催眠術のひとつやふたつやなんて、初歩中の初歩ってもんやで♡」

 

 それでも板堰は、指摘をやめなかった。

 

「いや、わしがでーれー言いたいんはそげーなことじゃのうて、勝手に人を操るなってことじゃ⛔ これであとですわろーしことになったらどげーする気じゃ?」

 

「で、でもやでぇ……☁」

 

 さすがにしゅんと頭をうな垂れさせる千恵利に、二島がここで助け舟を出した。

 

「まあ、もう済んだことやおまへんか、板堰殿☺ 千恵利はんかて気ぃ利かせはったおつもりであることやし、決して悪気があったわけではあらへんのですからなぁ☀ あと一応私どもの無実も、明日香村からの届けがでっち上げとわかって証明されはったし、あとは彼らが正直に白状するだけでございましょうや★ とにかくこれにて、万事めでたしめでたしにてございまする♡ なお、めでたいと申せば、昔っから祝いの席におきましては真鯛を食卓にご献上なされるのが、この日本全国でのひとつの儀式となっておりまするが、と申せばここ関西では明石の鯛が特に有名でございまして……うぷっ!」

 

「も、もうええ! もうわかったけのー!」

 

 再び無駄な長話に興じ始めた二島の口を、板堰はもはや慣れの境地に達している右手で、素早くふさいで止めさせた。

 

「あんたの無駄話に免じて、もう千恵利んこつは言わんようするけんのぉ♥ なんちゅうても、今回はあんたの舌に、何回助けられたかわからんぐらいじゃけぇー♡」

 

「お誉めに授かり光栄でんなぁ♡」

 

 二島の一礼も、今では定番となっていた。


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