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『剣遊記W』

第五章 嗚呼、女戦士哀史。

     (8)

 ところが孝治は酒場を目前にして、突然足をキキィッと急停止させた。当然涼子も、空中でいきなりストップとなったわけ。

 

『どげんしたと! 孝治っ!』

 

 ビックリ顔の涼子に、孝治はここでも、舌打ちで答えてやった。

 

「ちっ……せっかくの忠告も遅かったみたいっちゃね☠ おれもどうやら、涼子の言うとおり、巻き込まれたみたいやけ……☠」

 

 孝治と涼子の前に、例の男たちと初めて見る顔の男たちがいた。新顔はメガネとやせ型のコンビであった。そんな野郎どもが、合わせて五人。

 

 忘れもしない。孝治の顔面に一発お見舞いをしてくれた連中と、その仲間である。それがニヤニヤしながら、店から出てくるところだったのだ。

 

 彼らの向かう先は、間違いなくワイバーンを置いている、村の外れであろう。しかし、こうまでバッタリ鉢合わせとなった以上、もはや孝治に知らんぷりはできなかった。

 

 このような状況に置かれた孝治に、今の内にできること。それは眼前の五人組に気づかれないようそっと、小声でささやくだけだった。

 

「こげんなったら、せめてもの腹いせ☠ 友美がほんなこつ、ワイバーンば逃がしてくれたらええとやけどねぇ☁☂」


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