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『剣遊記W』

第五章 嗚呼、女戦士哀史。

     (7)

「……どうもお酒に、睡眠薬でも入れとったっちゅう雰囲気ばいねぇ✍ で、そんあと、先輩はどげんしたとやぁーーっ!♐」

 

『あとはもう、定番どおりに詐欺事件っちゃよぉーーっ!☞』

 

 ワイバーンを置いている村の外れから、涼子が先導。夜の道を全速で走りながら、孝治は事の顛末を涼子に尋ねていた。

 

 実のところ、くわしい話の成り行きが、孝治にはまだよくわかっていなかった。だけどここは、早いうちに酒場へ戻らないといけないようだ。

 

 少々心配ではあるが、ワイバーンの見張りを友美に託して。

 

 もしかするとこの隙に、友美がワイバーンを逃がしてしまうかもしれなかった。しかし今は、そんな考え過ぎをしている場合ではない。

 

 涼子が孝治の右横を浮遊飛行しながら、さらに話を続けた。

 

『それでぇ、そいつら酔っぱらっちょう荒生田先輩ば別に用意しちょった部屋まで連れてって、そこでいろいろおだてながら、なんかの書類にサインばさせたとよぉ☛』

 

 走りながら孝治は、「ちぇっ!」と舌打ちを繰り返した。

 

「先輩酔うたら、いっつも前後不覚なんやけねぇ☠」

 

 今までに何度も酒での失敗を繰り返しながら、それでもまったく懲りようとしない先輩のサングラス😎顔。そんなニヤけたツラを思い浮かべ、孝治は逆に、苦渋で顔面をゆがませる気分になった。

 

 そんな孝治に涼子の続けての説明は、さらなる追い打ちであった。

 

『それでぇ、そん書類ば上から覗いたとやけど、ワイバーンの所有権ば譲るだの、身売りを契約して、どっかの店で働かせるだの☹ とんでもないことばっかし書いとうやない☢ 孝治かて絶対、無関係やなかっちゃよ☠』

 

 これら涼子の報告は、まさに幽霊ならではの賜物(?)であろう。涼子は瞳の前で展開された陰謀の一部始終を、誰にも知られることなく、最後まで見届けていたのだから。


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