『剣遊記W』 第五章 嗚呼、女戦士哀史。 (17) 「も、もう、よかっちゃね……そろそろ上げてくれんね☠」
気づいたついでに湯あたり状態までも自覚した孝治は、友美に助けを求めた。
「は〜〜い☀」
すぐに友美が、二回目である浮遊術を唱えてくれた。これによって孝治の体は、再びふわりと宙に上がった。孝治の白かった肌は、全身見事にゆで上がり、完全な桃色に染まっていた。
孝治はそのまま裸で、草の上に舞い降りた。冷えた地面の感触が、熱くなっている素肌――まずはお尻に、とても心地良かった。そのついで、孝治は涼子に顔を向けた。
「……涼子んせいやけね♨ 変な長話ばっかしさせるけ、のぼせちまったっちゃよぉ……♨」
涼子が口をとがらせた。
『あたしんせいにせんといてや!』
「もう、なんでんよか……☠」
ここで孝治と涼子。ふたりしての口ゲンカ――にはならなかった。孝治はそれ以上、なにも言う気にはならず。まずはほてった体を冷やすほうに専念した。
現在、夜空に浮かんでいるモノは、丸々と光る満月だけ。他に誰も覗いている者はいなかった。だから孝治は遠慮なしを通り越し。大胆な振る舞いをためらわなかった。それも地面に大の字を描いた姿を、露天に仰向けでさらす暴挙ぶり。無論、真っ裸の格好で。
「わたしはもう慣れたけね☀」
友美はなにも文句を言わなかった。一方で涼子の瞳は、もろに呆れを示していた。
『それって、女ん子がやることやなかっちゃよ☠』
しかし涼子がいくら突っ込んでくれたところで、当の孝治は馬耳東風の開き直り。
「いつも裸ん格好しちょる涼子から言われたかて、いっちょも説得力なかっちゃけ☺☻」
『いいーーっ!』
今度は涼子が孝治に顔を向け、両手の人差し指を口に入れ、自分のほっぺたを左右に引っ張って舌👅を出すお茶目をしてくれた。 (C)2011 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |