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『剣遊記番外編U』

第四章 魔剣VSアンデッド軍団!

     (7)

 けっきょく板堰、二島、千恵利の三人。麻司岩たちの手によって連行された。場所は山陽街道から遠く離れた北方、播磨の山中だった。

 

 これは大勢のスケルトン(いつの間にか百体以上に増えている)を従えている状態なので、さすがに人前での行動はまずいじゃろう――と、脛駆が言い出しての策であるらしい。さらに付け加えれば、本気で板堰たちを始末しようと企んでいる、殺意の証明とも言えそうだ。

 

 だが、板堰たちを片付ける前に、絶対に聞いておかないといけない重要事項が、たったひとつだけあった。

 

「明日香でおまえが手に入れた魔剣は、今どこにあるんじゃ?」

 

 強圧的な口振りで、まずは麻司岩が板堰に問いただした。

 

「なんじゃと?」

 

 初めはこの詰問に、板堰はむしろとまどいを感じた。だけど、すぐにその理由を察知した。

 

(あっ、そうじゃったのぉ☆ こいつら千恵利が剣の化身じゃということを知らんけーのぉ☻)

 

 ついうっかりで、失念していた話であった。もっとも板堰とて、この場で真実を白状する気など、それこそさらさらもなかった。その代わりに、不貞腐れ気味な声音を、わざと三人に向けて返してやった。

 

「さあ、どうじゃろうのぉ☠ 伝説のとおりの魔剣じゃけー、どっかで遊んじょるかもしれんのー☠」

 

「なんでやねん、それ★」

 

 自分がからかわれているような気になったのだろう。当の魔剣(千恵利)が、両方のほっぺたをプクッとふくらませた。

 

 現在板堰、二島、千恵利の三人は、播磨の山中にある、けっこう大きめの炭焼き小屋――今は季節外れで使われていない――の中に連れ込まれていた。それも両手を後ろ手に頑丈そうなヒモで縛られ、床の上に正座で座らされている状態でもって。

 

 おまけに小屋の周辺には、スケルトンどもが警備兵として徘徊中。関係のない通行人も、これには大いにビビるだろう。従って小屋の周辺には、誰も近づけない状況となっていた。

 

 むしろふつうならこれで、衛兵隊に通報されるかもしれないのに。

 

 ここで少々、スケルトンについての説明を加えよう。

 

 彼らはゾンビなどと並んで、死霊術師が最も好んで召喚を行なうアンデッドの一種である。とにかく彼らアンデッドに共通する点は、知恵も知性もまったく備えていない性質にあった(一部例外もあり)。

 

 それこそ『右を向け』と言われても右を向くどころか、彼らには右と左、ついでに東西南北もわからない。つまり方向の概念すら持ち合わせていないのだ。だから食堂で客や給仕係に変装して待ち伏せをさせるまでは可能だったものの、伊奈不もそれ以上のコントロールがむずかしかったのだろう。ただ立ち上がって、板堰たちを取り囲むのが精いっぱい。しかし、ここで侮られては元も子もないので、麻司岩たちが隠れていた厨房からすぐに顔を出し、ここ一発のハッタリをかましたわけらしい。


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