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『剣遊記番外編U』

第四章 魔剣VSアンデッド軍団!

     (12)

「は、はい!」

 

 板堰からの激しい叱責を受け、千恵利が瞬時に、その姿をパッと魔剣に変えた。

 

 そう。それは戦士板堰守の手に、再び魔剣『チェリー』が備わった瞬間でもあったのだ。

 

「そうじゃ! これでええんじゃ、千恵利☆ わしの手にある限り、おまえが迷う必要はないけんのー!」

 

 一歩一歩と迫るスケルトンたちをギラリとにらみつけ、板堰は魔剣チェリーを振りかざしたまま、一気に小屋の外へと飛び出した。

 

 正確には小屋の裏口のドアに、全身での体当たりをドカンと決行! 戦いの場を野外へと移動させたのだ。

 

「ふむふむ、板堰殿にも迷いはまったくないようでんなぁ☀」

 

 あとから続く二島の声にも、板堰は目もくれずに、ふふんとうなずきで応じるのみでいた。

 

「無論じゃ!」

 

 それを隙とでも誤判断したのか。先頭に立つスケルトンの一体が、無鉄砲にも板堰目がけて飛びかかった。

 

 前述をしてあるが、スケルトンには知恵も策略もない。どこまでも無垢の本能のまま、生者に襲いかかるばかりなのだ。

 

 だが刹那!

 

 バシュッと板堰の振るった魔剣チェリーが、スケルトンの頭――つまり頭がい骨から背骨にかけてを、真っ二つに両断! 左右の骨が見事ふたつに分かれたそれは、一瞬にして塵と化し、戦士の眼前から消滅した。

 

「さすがは魔剣はんでんなぁ♡ ひと斬りでアンデッドを浄化してしまいはるとは♡」

 

 すっかり恒例となった二島の称賛も、今や板堰の耳には届いていなかった(あとで聞いた話で知った)。魔剣チェリーの威力に充分以上の手応えを感じている板堰は、それこそなにもためらう思いすらなし。さらに続くスケルトンの大群の中に、自ら猛然と飛び込んでいった。

 

「うおらぁーーっ!」

 

 気合い一閃! 右から襲いかかろうとしていたスケルトンを、剣を横薙ぎにして胴体部分を真一文字に切断! 上半身と下半身が分断され、これまた塵となって霧散した。

 

 それでもなお、死に対して鈍感となり果てているスケルトンどもの進撃は止まらなかった。また、これを承知している板堰も、自らと一体化した魔剣チェリーを縦横無尽に振るうのみ。迫るスケルトンを当たるを幸い、バッサバッサと薙ぎ倒していった。


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