『剣遊記番外編U』 第四章 魔剣VSアンデッド軍団! (11) 「いやはや、これは心底、恐れ入りましたにてございまするよ☀」
今度こそ、正真正銘。本心からの恐縮。二島が本日三度目の頭を下げたときだった。いきなりバシッと、閉じていた入り口の扉を押し開いた者が現われた。
「ぎょぎょぎょっ! これは、つい忘れてしもうとったんやけど、まだこいつらがおりはったんでんなぁ☠」
一番に驚いた二島のセリフどおり、外で見回りをしていたはずのスケルトンが、炭焼き小屋に乱入してきたのだ。
「きゃっ! なんやねんな、これってぇ!」
千恵利も、これまた可愛らしい悲鳴を上げた。なにしろ魔神のくせして、相変わらずのアンデッド嫌いである。これではたった今までの魔力自慢も、瞬く間にどこかへと吹き飛んでしまった感じ。
しかも乱入してきたスケルトンは、一体だけではなかった。続いてあとからあとから後続が押し寄せ、あっと言う間にさほど広くない小屋の中を、その骨ばかりの群れで埋め尽くした。
「な、なんやぁ……これっていったい、なんが起こったんやぁ!」
今やすっかり怯えまくりの千恵利に、二島が妙に冷静な口調に戻って応えた。
「う〜む、この私が愚考いたしまするに、これはきっと骸骨たちを召喚した魔術師が失神してもうたんで、恐らくコントロールが利かなくなって暴走を始めたんでございましょうや✍ いやはやこの私といたしたことが、これはまったくの不覚でございましたなぁ☀」
「淡々と状況分析しとう場合やあらへんのやぁ!!」
場違いなまでに楽観的な二島を前にして、千恵利が大声でわめき立てた。そのついで、しっかりと板堰の右腕に、全身を寄せてしがみついたりもしていた。
「ねえ、守くぅ〜ん……なんとかしてぇなぁ〜〜☠」
千恵利はわざとらしいほどに可愛い娘{こ}ぶった感じで、板堰に助けを求めた。ところがその板堰は、先ほどまでとはまったく別人の気持ち――事件の解決を喜んでいた思いから、今度は戦闘を眼前にした戦士の決意へと変わっていた。
「こいつはもう、やるしかないのぉ♫♬」
「えっ? やるってなにをやねん?」
恐らく『つい』なのだろう。上目づかいの顔になって尋ねる千恵利に対し、板堰はその口元を、充分以上に引き締めてから言った。
「こんぞぞけ(岡山弁で『鳥肌』)が立つような骸骨ども、もうバラバラにわやくそするしか、救うてやることができんようじゃのぉ✋ そやけー、千恵利ぃ! おまえの剣の本領、ここで発揮させてもらうけのー!」
「ええっ! あたし、こないな気色悪いの斬りとうないって、前にも言うたと思うんやけどぉ……!」
この期に及んでも、まだまだ愚図愚図気味である魔神娘に、戦士が一喝。
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