『剣遊記 閑話休題編V』 第一章 一角{ユニコーン}の新人さん。 (5) 豪雨の一夜が過ぎて、朝になった。
外から鳥のチチチッといったさえずりが聞こえたので、どうやら雨は上がったようである。
「ん……朝ぁ? あら?」
小鳥たちのさえずりに、瞳を覚ました友美であった。しかし彼女は、簡易ベッドでいっしょに寝ていたはずのパートナーが、いつの間にかいなくなっていることに気がついた。
「ねえ涼子ぉ、孝治知らんね?」
友美は慌てて毛布を払いのけ、ベッドからパッと飛び起きた。それから今も、空中浮遊のままで寝ている(?)涼子に声をかけてみた。
涼子はすぐに気がついてくれた。
『あれ? 孝治がおらんとね✄』
幽霊娘も孝治のいなくなったことに気づいていなかった。
『なんでかよう知らんちゃけど、あたしらが寝とう間にひとりでどっかに行ったみたいっちゃね☞』
見ればすぐにわかる状況の変化を、涼子がぬけぬけと言ってくれた。それもやや他人事気味に。もっとも友美も、これに異論はなかった。
「ったく風船みたいな人なんやけ⛑ 残ったわたしらが心配することなんか、いっちょも考えちょらんのやけねぇ♋」
しかもよく室内を見回したら、孝治の軽装鎧やその他の衣服などが、小屋の壁に掛けられたまま。
「いったい、なん考えとんやろっか?」
なんだか変な胸騒ぎを感じた友美は、すでに乾いている自分の衣服と軽装鎧を素早く着装。急いで小屋から外へと飛び出した。
『あん! ちょっと待ちんしゃいよぉ!』
涼子もそのまま空中浮遊で、友美のあとを追った。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |