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『剣遊記 閑話休題編V』

第一章  一角{ユニコーン}の新人さん。

     (4)

「ノミとか南京虫がおらんかったらええっちゃけどねぇ☻」

 

「大丈夫っちゃよ わたしが魔術で掃っておいたけ

 

 友美も孝治に続いて、一枚しかない毛布に潜り込んできた。これにてふたりで、ひとつのベッドに並んで寝るわけ。だけどベッド自体がけっこう大きいので、せまくて窮屈な思いはしなかった。

 

『あたしも寝よっと

 

 涼子はそのまま、空中浮遊で孝治たちの真上に浮かんでいた。しばらくして声がしなくなったので、幽霊のくせに、本当に熟睡したようだ。

 

「あ、そうだ☚」

 

 今になって孝治は、あることを思い出した。すぐにベッドから起き上がり、壁に掛けてある自分の軽装鎧の懐から、一枚の紙を右手でつまみ出した。掛けた場所がベッドのすぐ真横だったので、手を伸ばせば簡単に届く所である。

 

「孝治、なん取ったと?」

 

 毛布を肩まで掛けている友美が、小さな声で孝治にささやいた。孝治はため息を吐くような気分で、友美に応えた。

 

「ずっと前に先輩から作り方ば教えてもろうた折り紙の紙鉄砲なんやけど、作って鎧ん中に入れちょったの、今んなって思い出したっちゃね♐ なんでも先輩が言うことにゃ、『こげな飛び道具がいつかもしもんとき役に立つもんやけ、仕掛けくらい覚えちょっても損はなか✌』っちゅうてやねぇ でももろに紙やけ、もう濡れ濡れでボロボロの状態になっとうっちゃね ま、もうええことやけど✐

 

 孝治の言う『先輩』とは、北九州市にある未来亭専属の戦士、荒生田和志{あろうだ かずし}のこと。もちろん孝治も未来亭の一員であり、荒生田の後輩なのだ。

 

「まあ、もう要らんちゃけどね

 

 孝治はびしょ濡れになっている元紙鉄砲であった紙を両手でくしゃくしゃに丸め、そのままポイッと、そばにあったゴミ箱(これも小屋に備え付け)に投げ入れた。

 

 この様子をジッと見つめ続けていた友美が、ぼそっとベッドで寝たままささやいてくれた。

 

「まあ、あれでもベテランの戦士やりよう人なんやけ、少しは一理くらいあるかもっちゃねぇ✐✑」

 

「友美もけっこう、きついこと言うっちゃねぇ☠☻」

 

 孝治も苦笑いで友美に応えた。


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