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『剣遊記 閑話休題編V』

第一章  一角{ユニコーン}の新人さん。

     (3)

「上出来、上出来っちゃね☀ これで風邪引かんで済んだっちゃけ

 

 孝治は暖炉に火が点き、小屋の中の温もり始めを実感した。それから火の前でスクッと立ち上がり、着ている軽装鎧と下着の類を、この場でパッパパッパと脱ぎ始めた。

 

 小屋が完全貸し切りなので、遠慮などなにもなかった。

 

『あら? 孝治、全部脱いじゃうと?』

 

 端で見ている涼子が、なんだか意表を突かれたような顔をしていた。しかし孝治は、もはや気にする気持ちもなし。簡単かつ当たり前な気分で応えてやった。

 

「そうっちゃよ☻ 早よ濡れとう服ば脱いで乾かさんと、こんまんまで寝れるわけなかろうも

 

 などとほとんど開き直り気味。孝治は最後のパンティーまでためらわず、見事にポイッと脱ぎ捨てた。

 

 だけど倫理上は、まったく問題なし。なぜならこの物語で何度も繰り返しているけど、孝治は内面(?)はともかく、外面は完全に立派な女性キャラなのだ。従って、この場にいる友美と涼子の瞳の前で全裸になっても、ふたりとも今や大きく動じる様子も見せなかった。

 

 孝治はそんなふたり(友美と涼子)を前にして、脱いだ服と下着を木の壁の所々に引っ掛けてぶら提げた。これでひと晩干しておけば、あしたの朝までにはすぐに着られるぐらいに乾くだろう。

 

「わたしは孝治ほど大胆にはなれんちゃねぇ☹」

 

 友美もすでに、軽装鎧を脱いではいた。しかし最後のブラジャーとパンティーを、きちんと残してもいた。この最後の下着も雨で濡れていたのだが、自力の乾燥魔術で乾かしているので、着ていてなんら差し障りのない状態にしていた。

 

 つまり孝治のほうだけ、完全に真っ裸の格好。友美は胸と下(?)をしっかり着用のスタイルだった。ちなみに涼子もふだんのとおり(?)で、孝治と同じ真っ裸の格好。この三人は付き合いが長過ぎて、もはや隠す所など何も無い関係なわけ(どげんことや?)

 

しかもここで、涼子がまたよけいなひと言。

 

『孝治が大胆っちゅうのはようわかっとうっちゃけ、それよか友美ちゃんも、もうちっと自信付けたほうが良かっちゃよ☻ 裸のあたしが言うのもなんやけど、友美ちゃんかてけっこう成長ばして、孝治の勢いに迫りよう感じがするっちゃけね✌』

 

「きゃん! やだぁ!」

 

 涼子に言われて友美が、慌ててブラジャーごと自分の胸を両手で隠す。無論孝治も今の涼子発言に興味を感じ、友美にそっとささやいてやった。

 

「ま、まあ……お互いまだまだ、発展途上っちゅうことやね いつかこんおれが友美から抜かれる日があったりしてやねぇ

 

「もう! 孝治までなん言いよんね✄」

 

 友美の顔はこの時点で、見事真っ赤と化していた。ついでに涼子は、早くもこの話題に飽きたご様子。幽霊のくせに、大きなアクビをかましていた。

 

『まっ、なんでんよかっちゃけ、きょうはもう寝るっちゃね

 

「言われるまでもなかっちゃよ☻」

 

 孝治は全裸のまま、小屋にやはり備え付けとなっている簡易ベッドに、さっさと潜り込んだ。

 

 お泊まり小屋は宿泊用施設なのだから、ベッドが一台、しっかりと用意をされていた。ただいっしょに置いてある毛布のほうは、いかにも使い古した感じである茶色をしたボロボロの中古品。これだけが唯一、玉に瑕といったところか。


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