『剣遊記13』 第三章 空のバカンスは嵐を呼んだ。 (13) 「うわっち! あんましビックリしたもんやけ、こんまんまで廊下まで出てしもうたっちゃね♋」
自分自身のそそっかしさは自覚済みだが、今回もやはり、この悪癖は健在のようだった。それはとにかく、一刻も早く浴室に戻らないといけないのだが。
「きゃあーーっ!」
やはり最悪には最悪の積み重ね。浴室から外の廊下まで飛び出した孝治の前には、銀星号で働いているメイドさんがいた。そのメイドさんがバッチリ、全裸の孝治と鉢合わせをしたわけ。
もちろん今の孝治は女性であるが(まあ遭遇者が男であった場合よりはマシであろう)、急に裸の者――明らかに変人が現われたともなれば、これはもうパニックに近い状態。メイドさん(十代後半くらいの年齢)が高い悲鳴を上げまくった。
「きゃあああああああああああああああっ!」
孝治は慌てて釈明した。
「ち、違うっちゃ! お、おれはちょっとしたミスでこげなことに!」
とにかくこの場は急いで浴室に戻るべき。だけど不幸には、さらなる不幸が重なるもの。浴室のドアが孝治の飛び出したとたん、内側から自動で、カチャッと施錠をされたらしかった。
いわゆる自動オートロック。
「うわっち! は、入れぇーーん!」
孝治は全パニックになって、浴室のドアを右手でドンドンと叩きまくった。
早い話が孝治はこのまま、自分の真っ裸を大公開。逆に大勢の従業員たちが駆けつける中、浴室の前で大騒ぎを続けたわけ。
できればそのような現場を見てみたいものだが。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |