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『剣遊記 番外編X』

第三章 巨大怪獣、神戸港に出現!

     (14)

「むっ! あ、あれはなんや……!」

 

 六甲山中から突如現われたキマイラの姿は、当然ながら本来の創造主である、尾田岩の目にも入っていた。

 

 また、主人を右肩に乗せている、言わば先輩キマイラであるガストロキングの鋭い眼光にも、やはり同じ光景が写っていた。

 

 無論怪獣の本能として、自分と同じような体格を持つ生物は、すべて敵だとみなす事態となる。

 

 グギャオオオオーーン!

 

 この吠え声が、ガストロキングの宣戦布告であった。

 

「な、なんでや……なんでこないな所に、我れのバルキムが出たんやねん?」

 

 狂気に囚われきっている魔術師は、神戸の市街地蹂躙に、完全夢中となっていた。だがそれでも、自分の創造したバルキムを、決して忘れたりはしなかった。

 

「そやけど、あの様子から考えたら、どう見たって我らに敵意を示しとるとしか思えへんで☢ ふっ……そないなことやな☠」

 

 精神がどのようにゆがんでいても、状況の判断力だけなら、一人前以上に優秀。尾田岩の脳裏に、ピンとした閃き💡が湧いて出た。

 

「恐らくはあのしょーもあらへん、チンマイ魔術師の差し金やな☻ アホみたいに、我れのバルキムを自分の支配下に置いたもんやさかい、我れにケンカ売る気になったようやでぇ♨」

 

 復讐の鬼と化している中年魔術師の顔に、恐れと慄きの色はなかった。

 

「ふん☠ 確かにバルキムのほうが最新式なんやが、ガストロキングはそれ以前に我れが創造して、なおかつその性能は隅から隅まで仰山把握しきっとるんやぁ♐ そやさかいケツの青いガキなんぞ、鼻息で張り倒したろうやないけぇ♨」

 

 さらに加えて、迷いもためらいもなし。

 

「ガストロキングぅ! あんさんの弟分とも言えるあのバルキムを、あんさんの大怪力で一気に畳んでまうんやでぇ!!!」

 

 尾田岩が猛々しく叫んで、自分の第一号キマイラを、戦いへとけしかけた。またこれに応じてグギャオオオオオオオオン!――と、まるで魔術師本人の怨念が憑依しているかのようだった。ガストロキングも巨大極まる超雄叫びを張り上げた。

 

 ついに神戸の市街地を決戦の舞台とし、二頭の大型キマイラ――大怪獣と超獣が、激突する事態となったのだ。


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