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『剣遊記V』

第六章 これにて一件落着。

     (4)

 寮の正面入り口では大門率いる衛兵隊が、地下から地上への集結を完了させていた。

 

 そこへ降って湧いた事態。耳を引き裂くような女性の叫びが響き渡った。

 

 衛兵たちが騒ぐ。

 

「なんだ! 今の悲鳴は!」

 

「こん中からだ!」

 

 集結はしたものの、事件は最悪の様相となってきた。

 

「隊長っ! 人質ば取られたら、我々は手も足も出せませんばい!」

 

 砂津が苦渋の顔をして、大門に訴えた。だがこうなれば、大門にも早急に打てる手はないだろう。

 

「おのれい! 最後の最後まで見苦しい悪あがきをしおってからにぃ! 誰かこの中の様子がわかることができる者はおらんかぁ!」

 

「おれが行ってきますけ!」

 

 大門の求めに孝治は大声で応え、ついでに右手も高く上げた。

 

「お、おい! ここは『男子禁制』やなかっとか?」

 

 この期に及んでつまらない規則にこだわる井堀に向かって、孝治は高めの声で怒鳴り返した。

 

「おれかて今は『女子』やけね!」


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