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『剣遊記]』

第七章 薔薇の女神、ここに在り。

     (1)

「はい♡ 今回のお土産の、岡山名物『吉備団子』っちゃね♡」

 

「うわああっあああああい☀ ありがとさんですうぅぅぅ☀」

 

 今回もなにも、孝治から『お土産』なる逸品をもらったのは、千夏としては初めてであったろう。しかしもちろん、そんな記憶など、どこ吹く風。千夏は単純明快に大喜びしてくれた。

 

「美奈子さんと千秋ちゃんがまだ帰ってきとらんやなんて、けっこう師匠んとこに長居しとうっちゃねぇ♠」

 

 孝治としては三人そろった顔を見てみたかったのだが、居ない者は仕方がなかった。

 

『まっ、しょうがなかっちゃね♥ 次に期待ばしときんしゃい♥』

 

「なん期待するっち言うんやろっか?」

 

 そんな孝治のうしろで、涼子と友美がささやき合っているところだった。孝治たちの席に、荒生田が登場した。しかも不思議な有様。可奈との妙なツーショットで。

 

 ちなみに現在、孝治たちのいる場所は、未来亭の酒場の一番奥のテーブル。

 

「よう、諸君♡ 元気でやっちょるかにぃ♡」

 

「あれぇ? 可奈さんが先輩とごいっしょぉ? これは珍しいことじゃなかですかぁ?」

 

 荒生田には目もくれず、孝治はまず、可奈に向けて挨拶をした。

 

「ちぇっ☠ オレはおまけっちゃねぇ☠」

 

 これにてやや不貞腐れ気味となった荒生田が、千夏の右隣りに席を取ってドンと腰掛けた。

 

「ああっ☀ サングラス😎のオジちゃんですうぅぅぅ☀」

 

「オジちゃんやなか☠ お兄ちゃんと呼んじゃってや☠」

 

「ううん、オジちゃんですうぅぅぅ☀ そんなダサいサングラスかけた人ぉ、お兄ちゃんにはいませんですうぅぅぅ☀」

 

「おのれはオレば馬鹿にしちょるんかい☠」

 

「はい、そうなんですうぅぅぅ☀」

 

 千夏と荒生田の漫才は、いつものパターンで脇に置く。それよりもその隣りで、友美が可奈に話しかけていた。

 

「荒生田先輩と可奈さんがごいっしょやなんち、孝治やないけど、なんだかとっても珍しい感じですっちゃねぇ♡ なんか意気投合ばしたとですか?」

 

「ふふん♡ そんなこんずらぁ♡」

 

 ここで思わせぶりに微笑む可奈の仕草が、これまたなにかの思惑ありげのように、孝治には感じられた。

 

(可奈さんが笑うと、なんか怖いっちゃねぇ☠)

 

 もちろんこれは、口には出さない。これに気づくわけもないだろうけど、可奈が友美の疑問に答えてくれた。

 

「岡山から持って帰った宝さ山分けしたついで、ふたりで次の計画さ練ったんずら♪ それと言うのも、あいつらの屋敷で見つけた宝の古地図に、けっこう有望株みたいなんが、はかがいく(長野弁で『とてもはかどる』)ほど出てきたもんだからだにぃ♡」

 

「なるほどぉ〜〜、そんで今度は先輩とタッグば組んだっちゅうことですね♠ これってけっこう、マジで最強かも♓」

 

 なんせ変態と悪党のコンビやけねぇ……可奈さん、先輩ば口八丁で丸め込むなりしたっちゃね――と、これも孝治は、決して口にはしなかった。


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