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『剣遊記15』

第五章 暗雲めぐる太平洋。

     (8)

 ところが話の展開は、意外な方向へと進んでいった。なんと蟹礼座が、グアム島への寄港に難色を言い出したのだ。

 

「いかん! グアム島はやめたほうがええ! これはわしの勘なんじゃがのぉ

 

「かん……ですけ?」

 

 いきなり意味不明的に言われても、孝治たちとしては、頭の上に『?』マークを何個も旋回させるしかなかった。

 

「いったいなんが、やめたほうがええとですか?」

 

 友美が尋ねても、蟹礼座は頭を横にブルブルと振るだけ。

 

「やから言うちょうじゃろうが⛡⛠ わしの勘じゃとのぉ♤ そがいにあんまりずんごまん(広島弁で『突っ込まん』)でほしいげな☢

 

「いっちょも話がわからんとですけどぉ……☁」

 

 まったく理解のできない孝治は話に食い下がるのだが、今の蟹礼座には、なんと味方がついていた。

 

「そうまでおっしゃられるのでしたら、ここは客人はんのご要望どおり、グアム寄港はやめにせなあきまへんなぁ☹」

 

「うわっち……相変わらず売り込みが露骨っちゃねぇ☠」

 

 一応小声にしておいたが、幸い孝治の今のささやきは、蟹礼座の味方についた美奈子の耳には入らなかったようだ。しかし美奈子だけではなく、もうひとり蟹礼座に、はっきりと賛同する者がいた。やっぱりと申すべきなのか、秋恵であった。

 

「あ、あたしも……そのぉ……美奈子先生に賛成しますばい な、なんちゅうたかて、お客さんの嫌なことしたらいけんとばってん……☁

 

 かなりにもじもじ状態ではあるが、大筋において蟹礼座と美奈子への援護であろう。そのセリフを耳に入れながら、孝治はそばで立っている千秋と千夏にも訊いてみた。

 

「あんたらの師匠、あげなこと言いよんやけど、あれでええっち思うけ?」

 

 返事はあっさりとしていた。

 

「ええもなんも、師匠が言い出しようことやさかい、千秋にはもう、なんも言えんで

 

「千夏ちゃん、グアム島に行けないの残念さんなんですけどぉ、また今度美奈子ちゃんがもっといい島、探して連れてってくれますですうぅぅぅ♡♡♡」

 

 孝治は言った。

 

「そげなん期待せんほうがええっち思うっちゃけどねぇ☢」


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